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Amazonプライムビデオで「武士の献立」を見た感想

Amazonプライムビデオで「武士の献立」を見た。

「武士の献立」は江戸時代の加賀藩で料理人を務めた侍、舟木伝内の息子に嫁いだ料理上手な女中の物語だ。監督は朝原雄三で主演は上戸彩。まあ「包丁侍」と非公式に呼称される料理をする事で仕える侍がいるというのは意外というか盲点だった。そりゃまあ大名だって当然食事はするだろうが、そういう事は女中がするものとばかり思っていた。事実この包丁侍こと舟木家では特別な時を除いて料理は奥方や女中らしき女性がしている。

それはさておきこの手の時代劇らしく一応の山場として加賀藩のお家騒動なんかに巻き込まれたりもするが、基本的にはかつて剣の道を志し料理にはまったく興味のない安信をいっぱしの料理人に仕立て上げる上戸彩演じる春の奮闘が描かれている。

食材や衣服など生活に密着した部分での映像は鮮やかで、というか鮮やか過ぎて若干リアリティに欠けるが(冷蔵技術の無い時代にしては魚が新鮮すぎるし、遠方から数日かけて運ばれてきたであろう野菜も色鮮やかすぎる)、料理を美味しく見せるのもこの映画のエンターテインメントなのだろう。使い込まれているはずの台所のまな板など料理道具が綺麗すぎるところも気になったが。

つまらないという訳ではないけど、あえて人に勧めるほどではなかったかな。

Amazonプライムビデオで「隠し剣 鬼の爪」を見た感想

Amazonプライムビデオで「隠し剣 鬼の爪」を見た。

前回見た たそがれ清兵衛 と同じく、藤沢周平の短編時代小説を山田洋次監督が映画化した作品だ。主演は永瀬正敏である。

話の大筋は同様の指摘がアマゾンのレビューにもあったが、たそがれ清兵衛とほぼ同じ。実は剣の腕は立つがうだつの上がらない侍が、武士の世界のしがらみで一緒になる事ができない幼馴染的な女性となんやかんやあった後に、謀反の罪を着せられて立てこもるかつての同僚にして剣の達人を討てという命令をいかにも悪そうな家老から受けるという流れ。

ただ私はたそがれ清兵衛に比べるとこの「隠し剣 鬼の爪」の方がよりハードボイルドな印象を受けた。清兵衛と違いこの作品の主役の片桐宗蔵は独身だし、藩命を受けてそれを果たした後の行動とその結果がいかにもハードボイルドだ。さらにその後の行動についてはハードボイルドではないが、全体的には時代劇風ハードボイルドと言っても良いと思う。

まあ黒澤明監督と三船敏郎のコンビの七人の侍を始めとしたかつてのアクション時代劇の方がハードボイルド要素は強いかも知れないけど。結論としてたそがれ清兵衛を見て面白いと思った人は見て損はないと思う。話の大筋が似てたら似てたで、今度はわずかな違いを楽しむという方法もある。

Amazonプライムビデオで「たそがれ清兵衛」を見た感想

Amazonプライムビデオで「たそがれ清兵衛」を見た。

たそがれ清兵衛は藤沢周平の同名の短編時代小説他2編を原作として監督: 山田洋次、主演: 真田広之で制作された本格時代劇である。藤沢周平の小説は私の父が昔から大好きで私も子供の頃から何冊か読んだ事があるが「たそがれ清兵衛」は読んだ事があるかどうか覚えていない。それはさておきこの映画を見た私のシンプルな感想は「現代人が見てリアリティを感じる命のストーリー」というものだった。

「本格時代劇」なる時代劇の分類はたびたび耳にしてきて、これまでにもそういった作品を何度か見たことがあるが、要するに昭和のチャンバラ中心の時代劇と違って時代考証をある程度ちゃんとした上で現代人にも共感を呼びやすい人間ドラマを描くジャンルなのだと思う。その意味ではこの「たそがれ清兵衛」はまさに現代の大人が見て最も共感を呼びやすいヒーローとして創られている。

出世や裕福になる事は望まない。早くに妻を亡くし、年老いた母と幼い子供二人とつつましく暮らし、着の身着のまま薄汚れた身なりをしているが実は剣の達人で、幼馴染の美人に密かな恋心を抱かれている。身もふたもない言い方をすれば自信を喪失した現代日本のハードボイルド、大人向けのライトノベル、このある意味とてもチープな設定が山田洋次監督の映像美と真田広之の見事な演技によって昇華されている。

登場人物の演技はほぼ全編に渡って素晴らしいが特に主演の真田広之と田中泯の殺陣のシーンが最高だ。二人とも剣の達人のはずだが、いわゆるチャンバラのような派手はやりとりはない。一瞬のスキを見せれば切られるという緊張感からか達人といえでも恐る恐る剣撃を繰り出し、そして実際にほんのわずかなミスによって勝敗が付く。そして若干芝居がかった点もあるが田中泯の絶命シーン。本格と言いつつも殺陣がクライマックスになるのは時代劇の宿命か。

結論として非常に面白かった。まだ見た事ない人にはぜひおすすめする。

Amazonプライムビデオで「ポリスアカデミーシリーズ」を見た感想

Amazonプライムビデオで映画「ポリスアカデミー」のシリーズ全7作品を全て見た。

本当に懐かしい。私が子供ころTVの映画番組で何度も放送されてて大好きだったのを覚えている。陽気なイケメンのマホニー、ハッピートリガーな性格のタックルベリー、声帯模写が得意なジョーンズ、背が高く力持ちのハイタワー、普段は気弱だがキレると怖いフックス、元ギャングのボスでおつむの弱いゼッド、他にラサール校長や敵役でやられ役でもあるハリス警部やマウザー警部など個性的で魅力的なキャラクターが満載だった。同じように個性的な警察官が活躍するアニメ・漫画の機動警察パトレイバーにも影響を与えているらしい。そういえば太田功はタックルベリーだし、進士幹泰は所帯持ちのファックラーとフックスの合成で、山崎ひろみはハイタワーと似てると言えなくもない。

それはさておきポリスアカデミーの話だが、この手の連作映画の宿命として初期シリーズこそ面白いものの回を重ねるごとに駄作になっていくというものがあるが、このポリスアカデミーも残念ながらそこは変わらない。自信をもって面白いと言えるは1から3くらいまでで、4以降はマンネリすぎて見るに堪えなくなってくる。アニメ作品であるパトレイバーのように怪獣やスパイがでてきたりとか、コメディなんだから常識にとらわれずやりたい事やっちゃえばいいのに、意外にも常識的というか警察の仕事の範疇を超えないという制約下でのストーリー作りに早々に無理が来たという感じだ。

まあ無理に7作品見ようとすれば文句の一つも言いたくなるがプライムビデオなら無料なんだし昔好きだったという人は1から3あたりまでは見てみる事をおすすめする。古い作品だけあって当時の時代を反映したシーンが結構面白く、スケボーやラップが「ナウい」ものとして扱われていたり(今から見るとすごくダサイ)、最後の7なんかではゲームボーイを持った悪人が世界中のコンピューターに侵入できる「パスキー」を開発させようとするなど、「当時はこんなのが通用してたんだな」と半ばあきれる感じに楽しめる。

Amazonプライムビデオで「ミニオンズ」を見た感想

Amazonプライムビデオで「ミニオンズ」を見た。

ミニオンズは2015年、ユニバーサルスタジオの3DCGアニメ専門子会社イルミネーション・エンターテインメントによってつくられた3DCGアニメだ。3DCGアニメといえばピクサーやドリームワークスという印象が強いが、興行収入ではほぼ同格の争いをしている。

そのイルミネーション・エンターテインメント唯一のキラーコンテンツが怪盗グルーとその手下の黄色く背の小さい生物「ミニオン」が登場するシリーズであり、今回のミニオンズはそのミニオン達がグルーと出会うまでの物語を描いた作品となっている。なおシリーズ第1作目となる「怪盗グルーの月泥棒」もプライムビデオで見られるみたいなので、どちらから先に見てもよいけどぜひ両方見てもらいたい。

怪盗グルーシリーズは登場人物がみんな可愛らしいが、特に最強最悪の主に仕えることを生きがいとしている黄色い生物のミニオン達がすごく可愛い。その人気の高さからスピンオフ作品が作られるほどだが、基本的に「良い子」ばかり登場するハリウッドのアニメ作品の中で「悪」を好むキャラというのが良い。もちろん本当の意味で悪いわけでなく、いたずら好きの子供程度の悪なのだが、そこがとてもかわいい。昔からよく言われる「ダメな子ほどかわいい」というのは真実だ。

ほのぼのした映画でのんびり癒されたいという人はぜひどうぞ。

Amazonプライムビデオで古谷一行の金田一耕助シリーズ「犬神家の一族」を見た感想

Amazonプライムビデオで古谷一行の金田一耕助シリーズ「犬神家の一族」を見た。

プライムビデオで見られる古谷一行の金田一耕助シリーズもこれで7作目にしてラスト。最後の最後はシリーズ第1作目にして傑作中の傑作であるこの「犬神家の一族」でしめたいと思う。犬神家の一族といえば1976年に監督:市川崑、主演:石坂浩二で撮られた映画の方が有名かも知れないが、こちらのTVドラマも初放映時の最高視聴率は40%を超えるという知る人ぞ知る名作のようだ。

実際私はこれまでにも1976年の映画「犬神家の一族」だけでなく、そのリメイクである2006年の映画「犬神家の一族」も見た事はあるが、このTVドラマシリーズはこれらにない良い部分がたくさんある。

まあ映像美という点では市川崑監督による手腕や、制作にかけられている費用などを鑑みても映画に今一歩譲るかもしれないが、約2時間という時間制限のある映画と違って、1時間ドラマ約45分x5本という時間を使って丁寧に描かれるTVドラマ版の物語の方が登場人物それぞれの心情がより深く解って良い。

また映像美というほどのものではないが、この作品の重要な要素の一つであるスケキヨの仮面は映画版よりこちらの方がインパクトが強い。死体などは時代もあるだろうがいかにも人形という感じで笑ってしまうほどだが。

他にも映画版とこちらのTVドラマ版で違い部分はたくさんあるが、私が特に面白いと思ったのは二代目水戸黄門こと西村晃の演じる古舘弁護士が、黄門様だけあって非常に賢そうで、金田一耕助と並ぶとホームズとワトソンの様な名コンビに見えるなと思うほどだった。おそらく出番も映画版より多かったと思う。

これまでに「犬神家の一族」を一切みた事がないという人はまず1976年の映画版を見る事をおすすめするが、この映画を見た事があって犬神家の一族を再び見たくなったという人にはこちらのTVドラマ版をおすすめしたい。

Amazonプライムビデオで古谷一行の金田一耕助シリーズ「悪魔の手毬歌」を見た感想

Amazonプライムビデオで古谷一行の金田一耕助シリーズ「悪魔の手毬歌」を見た。

古谷一行の金田一耕助シリーズを見るのはこれで6作目、岡山の田舎に伝わる手毬歌になぞらえたいわゆる「見立て殺人」が行われるという、横溝作品の真骨頂のような作品である。これまでに映画化されること2回、TVドラマ化は5回、当然物語は面白く全6話というボリュームでも見ていて飽きさせない傑作中の傑作である。

そしていつものように作品の舞台となる昭和30年、今回のTVドラマが製作された昭和52年の時代を感じさせる興味深いシーンがたくさんあった。中でも第1話の冒頭近く、金田一が村の主要な住人を紹介するシーンで「由良五百子(ゆらいおこ)」という老婆の年齢を「なんと驚くなかれ、83歳」と紹介したのが時代を感じさせた。

この頃は田舎の寒村であっても80歳を超える老人の存在は驚くべきものだったのだ。なお平成27年(2015年)における総務省統計局のデータによると、現在わが国の80歳以上のお年寄りの人口は1000万人を超え、総人口に占める割合は7.9%らしい。100人いたらおよそ8人が80歳以上という計算である。同じページに過去のデータも載っていたので昭和30年当時のデータも見てみると、80歳以上のお年寄りの人口は51万人、総人口に占める割合で言うと0.6%、100人に一人もおらず1000人いれば6人ようやく見つかるという計算だ。

他にはすでに無くなった職業としてではあるが「活動弁士」なんて言葉がでてきて実に面白い。登場する家屋も藁ぶき屋根だったりして、主人公の金田一を除いて男性はスーツ姿である事が多いが、女性は着物姿の人が多い。

そういう感じなので原作小説をすでに読んで話のあらすじを知っている人でも、このドラマを見てみるととても面白いと思う。おすすめである。

Amazonプライムビデオで古谷一行の金田一耕助シリーズ「真珠郎」を見た感想

Amazonプライムビデオで古谷一行の金田一耕助シリーズ「真珠郎」を見た。

古谷一行の金田一耕助シリーズを見るのはこれで5作目だが、この作品はこれまでと少し趣の違う感じがした。そもそも本来の小説では探偵役は金田一耕助ではなく由利麟太郎という名の、警視庁の元捜査課長という設定だったらしい。横溝正史が戦前に書いていた推理小説はこの由利麟太郎が主人公である事が多く、戦後になって書くようになった作品から新たに金田一耕助が登場する様になった、とこういう事らしい。

なのでこの真珠郎も横溝正史テイストを残しつつも、金田一耕助が登場するシリーズを本格推理小説だとしたら、江戸川乱歩的な怪奇ミステリといった趣が強い。それを昭和のチープな特殊技術でなんとか再現しようとする努力が垣間見られて面白い。当時としては余程の力作だったのか、全3回のドラマの冒頭に必ず真珠郎のシーンが挿入される所などは3回目ともなるともはやジョークに感じられる。

まあつまらないという事はないが、本来の金田一耕助が登場する作品にくらべて若干のインパクトの弱さを感じた事は否めない。

Amazonプライムビデオで古谷一行の金田一耕助シリーズ「不死蝶」を見た感想

Amazonプライムビデオで古谷一行の金田一耕助シリーズ「不死蝶」を見た。

古谷一行の金田一耕助シリーズを見るのはこれで4作目。舞台は東京でも西日本でもない信州だが、土地の名家とブラジル移民の娘という横溝作品としては異色な登場人物の組み合わせが少し面白い作品である。カソリックの教会や外国人の神父なんかも登場して、まるで横溝作品のドラマではないような雰囲気も感じられて多少魅力が減少している点もあるが、そこが面白いと言って見るべきように思える。

事件の本筋やトリックなどは時代それなりというかいまや古めかしい印象をどうしてもぬぐえないが、こういう昭和の古い作品ならではある種のゆるい雰囲気を感じる作品はそこそこ面白い。非常にどうでも良い話なのだが、ドラマの冒頭に登場する新聞社の男が若い時のウッチャンナンチャンのナンチャンこと南原清隆にどことなく雰囲気が似ていてそこが妙におかしかった。決して面白くなかった訳ではないが、それ以外にとりたてて話すべき所もない感じだ。

Amazonプライムビデオで古谷一行の金田一耕助シリーズ「黒猫亭事件」を見た感想

Amazonプライムビデオで古谷一行の金田一耕助シリーズ「黒猫亭事件」を見た。

古谷一行の金田一耕助シリーズを見るのもこれで3作目。なお横溝正史による推理小説「黒猫亭事件」は、名探偵・金田一耕助が登場するものでは3番目にあたる作品であり、「3」という数字に奇妙な符合があるのはまったくの偶然である。

金田一耕助というと岡山を中心とした西日本を舞台にした作品の方が名作と言われる確率が高いが、今作の舞台は東京・武蔵野、登場人物も名家の一族ではなく大陸からの引き揚げ者が作った酒場を中心に事件が展開する。他にも土建業者やダンスホールなど戦後間もない昭和の雑多な風俗が垣間見えるシーンが多くてなかなか興味深い。ドラマが作られたのは1978年(昭和53年)なのでどこまで当時の雰囲気が正確に再現されてるかは解らないが。

推理小説のトリックとしてはいわゆる「顔のない死体」を扱ったものであり、いかにも古めかしい本格推理小説のていを成している。まあ事件の本筋以外にややこしい相関関係などはなく作品発表当時はともかく現在見ても意外性はほとんどない。1時間ドラマx2本という短い時間で見れるシンプルな構成となっているので暇つぶしで見るにはちょうど良いかも知れない。