夏のあらし!を見た

ちかごろ新房昭之監督にはまっている私だが、新房監督つながりで夏のあらし!のアニメを見た。

素直な感想を言うと少し期待はずれだった。面白くないという訳でもないのだが、新房監督の他作品のような演出や早セリフによる掛け合いがあまりなかったからだ。おそらくこの作品の世界観である “昭和” という要素を詰め込みすぎたために新房監督自身のテイストを入れ込む隙間が無くなってしまったのだろう。

この作品はとにもかくにも昭和の懐古趣味があふれた作品である。ただその漠然とした昭和という時代を大雑把に取り入れているために懐かしいという感情はあまり沸いてこなかった。某三丁目の夕日のように昭和の一つの時代を切り取ったのではなく、一つの鍋に昭和という具材をとにかく放り込んだ統一感のなさがこの作品の特徴だと思う。だからなのか途中でその昭和テイストにお腹一杯になって飽きてきてしまった。

そんなもんだから肝心の昭和テイストの再現も中途半端。懐メロを歌う声優さんたちの歌が楽曲から浮いているのは仕方がないとしても、おそらくプロの歌手が歌っているであろう主題歌のボーカルは酷かった。きっと歌がかなり上手いであろうと思われるのに、妙にスカした歌い方をして声量が出ていない。せっかくの昭和な画面に昭和なアレンジ、ここでちゃんと声を出す昭和歌謡の歌い方をすればすごくしっくりくるはずなのにボーカルの人は何を勘違いしたのかうわべの声色だけ昭和っぽい演技をして楽曲を台無しにしてしまっていた。

お話としては日常のギャグパートはそれなりに面白かったのだが、やはり戦時中のエピソードを持ち込んだシリアスパートはつまらなかった。原作準拠でいえば必要なのだろうが、そんな重い話を全13話程度のアニメでやっても感情移入できないのでもっと短くまとめて欲しかった。

たぶんこの作品は製作している側は面白かったんだと思う。そして見てる方も決してつまらないという訳でも無い。しかしこの手のパロディネタ満載の作品はもっと気楽に見たいのに、下手に考えさせられる要素を入れないで欲しかった。そうなるとこちらもつい余計なツッコミを入れたくなってしまうというものだ。