灰羽連盟を観た

こういう作品を観た後って世界観とかについて考察してしまうのは野暮な事だろうか。

しばらく観ていくと死後の世界の話なのではないかと予想がついてくる。灰羽達の羽が白くもなく黒くもないのも天使でも悪魔でも人間でも無い証明だと思われる。灰羽達の名前の由来である生まれてくる前に見ている夢は、死ぬ直前の記憶でラッカは落下死でレキは轢死。特にラッカとレキの死は自殺を思わせるもので、彼女達の羽だけが黒い罪付きとなったのもそれと関連があると思われる。他の年長組メンバーも自殺では無いと思うが同じような暗示がなされているが、年少組は少し違う。これは年少者が死というものに明確なイメージを持っていないために、死の直前の記憶よりも生前の記憶が強く残ったためでは無いかと思う。

さて物語の途中からクウがグリの街から壁を越えて巣立っていくが、「いつかまた会える」というセリフが何度かでてくる事から、その後の世界がある事は間違いないと思われる。しかし天国へ行ったのか輪廻して新しく生まれ変わったのかは解らない。

ただし問題は「何のために」灰羽たちはグリの街で生活をしなければならないのかと言う事だと思う。おそらく作品としては生前の罪を償ったり思い残した事を遂げたりと、生前と「その後」をつなぐ何かするためだという一応の説明はつくのだろうが、どちらにせよそれ自体が何故なのか説明する事は誰にもできないだろう。そういう疑問を抱かずにこの灰羽連盟のような世界観に納得するには、それだけ人生や死に対してある種の固定観念のようなものが無ければならないと思う。この作品が日本よりも海外でうけたのは、キリスト教的な宗教感が深層心理にある人たちの心に響いたからだろう。「罪があればたとえ死後でも償わなければならない」のはまさにそんな感じだ。

まあそんな事をこれ以上考えてもしょうがないのでこの辺でやめておこう。正直なところ清浄すぎるこの作品の世界観は自分の心にはあまり刺さらなかった。