東京島を見た

木村多江主演の映画、東京島を見た。

この映画は実に生々しい作品だと思う。物語は中年の女性が夫と共にクルーザーでの旅行中に、船が難破して無人島に流れ着いてしばらく暮らした所から始まる。その島に新たに若いフリーターの男達が16人流れ着き、島で唯一の女性である主人公の清子がどうやって生き抜いていくかを描いた物語である。

まずこの設定だけでかなりエグい印象を受けるが、実はこれは “アナタハンの女王事件” という実際の事件をモチーフにしている。一緒に流れ着いた夫は序盤で早々と命を落とし、清子は男達の中で腕力の強いカスカベの妻となって女王として君臨する、その後また新たに6人の中国人の男達が流れ着き、カスカベも謎の死を遂げる。男達は争いの種になる清子の夫となる男を公平にクジで選ぼうとするが…、といった感じで物語は進んでいくが、その後も予想を裏切る展開が息つく間もなくやってくる。ハリウッド映画の様な派手なスリルも無ければサスペンスも無いが、ただひたすらじわじわと生々しい展開が待っている。

映画として面白いとは簡単には言えない、ある意味で面白い作品だと思うが、その面白さは見ていて心地良いものでは無いからだ。島からの脱出を試みる中国人たちと比べて、刹那的に島に順応してる様な日本人の男達、そしてその間を女という武器を使っていったりきたりする清子、こういう娯楽の域を超えたリアリズムは精神的にキツい。しかも清子が中年女だというからなおさらだ。私がもしこの島の男達の一人だとしたら、強く生きる事も上手く順応する事もできず早々に精神を病んでいるような気がする。

恋人や家族と一緒には見れないが、仲の良い友人には勧めたい作品だと思う。