フダンシズム-腐男子主義- を読んだ

もりしげによる漫画、フダンシズム-腐男子主義- を読んだ。

BL作品が好きないわゆる腐女子に恋をしてしまった、眉目秀麗かつ文武両道のパーフェクトプリンスの物語。このプリンス、頭は良いのだがいわゆる天然というやつで、腐女子である片思いの少女に近づくために女装して腐女子を演じる。その女装までも完璧に似合ってしまうところが漫画ならではなのだが、そこからいろいろな事件が巻き起こるラブコメディといった感じの作品だ。

BLをよく知らない男性読者のために、軽めのBL講座なんてのもある。こういう趣味をわざわざ解説するなんて野暮なことだと思うが、雑誌で読んでいる比較的一般の読者には親切なのかも知れない。

ところで登場するヒロインたちの多くが濃い目の腐女子として描かれているために、どのヒロインにもまったく萌えることができない。多分この作品の真のヒロインは、主人公が女装して演じるアマネなんだろう。私も実際に女装をしたいとまでは思わないが、変身願望というか女性としての生活も体験してみたいというのは男にとってむしろ自然な事だと思う。登場人物のほとんどが何かしらの性倒錯を持っているので、主人公の女装を変質的に感じないというのもあるだろう。

ただ残念なことに男性読者の共感を得るためか、タイトルに反して主人公が最後まで “腐男子” にはならなかった。話のなかではBL作品にも理解を示し、腐女子を演じる事やそこで生まれた人間関係を心底楽しむようになったが、それを “腐ってる” とは多分言わないように思う。もちろん実際の腐女子にだって、軽めの人もいれば非常にディープな人もいるのだろうが、この主人公を腐男子と呼ぶのは少々納得がいかない。私自身が腐男子ではないのでうまく説明ができないが、この主人公は他の腐女子達とは違ってBLや原典の作品が好きなのではなく、そこで生まれた人間関係が好きなのだと思うからだ。もしこの主人公がガッツリBLにはまったとしたら、おそらく多くの男性読者が引くことは容易に想像ができるのだが、いくとこまでいった方が話題にはなっただろう。

現在は高校生になった主人公たちを描いた “フダンシフル!” という続編が連載中なのだが、さらに一般読者受けを狙ってありがちな文化系学園ラブコメになりつつある。高校に漫研がないから部員を集めて漫研を作ったり、他の同好会と部室をかけてドッジボールの試合をしたりと、いつの時代の作品だとツッコミを入れたくなるほどの駄作である。テレビアニメ化でも狙っているのだろうか。