カラフルを見た

2010年公開のアニメ映画、カラフルを見た。

一度死んだ魂が、自殺をした中学3年生の少年の体で人生をやりなおすことになるというお話。新しい体の元の持ち主の小林真は、友人もおらずクラスで孤立していて、思春期の少年だったらおよそ我慢できない事実を連続して知ってしまったが故に自殺をした。思春期の少年の自殺というテーマからもわかるように、一人の少年が別の少年の人生を客観的に見ることによって、生きるとは何かを問いかける物語となっている。

自分の思春期を思い出して色々と考えさせられる内容だった。中学生といえば自我の成長が著しく、そのうえ親に対する反抗心が芽生える時期でもある。誰もがつらい現実や厳しい世界とたった一人で立ち向かわなくてはならなくなり、ほとんどの人間が自分の生きている現実と世界に絶望する。その後、ただの仲良しとは少し違った友人や恋人をつくることにより、自分ひとりで世界と戦う必要がないこと、一人でなければこの世界もそれほど悪くはないことに気づいていつしか大人になるんだと思う。自分の殻に閉じこもっていては、世界はいつまでも自分に厳しいままだ。

おそらくはそんな事を訴えたくて作られた作品なんだと思う。実際に今一人ぼっちで世界と戦っている思春期の少年たちにその思いが届くかは解らないが、自分の昔を振り返ってそういう子供達に少しでも優しい世界を作るべきだなと思ったりもした。自分もかつては一人ぼっちで全世界を相手にしているような気分でいながら、世界の腐敗と堕落を心底嫌悪していたからだ。

大人になってそういう過去の自分を若いとか青臭いとか笑うのは簡単だが、いまこの瞬間に苦しみ悩んでいる子供達がいることを思うと彼らを笑うことはできない。この作品は思春期の少年少女達のために命の大切さやヒューマニズムを押し付けるものではなく、かつて思春期を過ごした大人たちに当時の自分を思い出させるための作品なのではないかと思う。