御先祖様万々歳!を観た感想

押井守監督による異色のホームドラマアニメ、「御先祖様万々歳!」を観た。

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー、機動警察パトレイバー 劇場版、GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊、などなど日本アニメのみならず世界の映画界にまで少なからぬ影響を与える押井守監督によるオリジナル作品という事で観てみたわけなのだが、期待どおり、いや予想どおりの作品だった。

この作品を素直な気持ちで「面白い」と言える人は映像制作や舞台芸術に携わる玄人だけだろう。それ以外でこの作品を「面白い」と言うのは、私のように、性根がひねくれてしまってもはや素直な気持ちで作品を観ることのできなくなってしまった半可通の素人だ。押井守という監督は「原作という束縛」があってはじめてまともな作品を作ることができる人なのだという事がよくわかった。

ちなみにこの作品を「本当に面白い」と言い張る人は、大学生の演劇サークルのオリジナル作品を見に行けばこんなのばっかりだから楽しめると思う。作品が理屈先行で表現技術が追いつかず、最後にはその理屈さえも破綻してその結果生まれたものを「前衛」だと主張する典型的なパターンである。「面白い」のも評価に値するのも、作品それ自体ではなく、この作品を商品として完成させてしまった会社の経営陣のメンタリティの方だと思う。これだけ好き勝手やったら、作ってる方はさぞかし楽しいだろうよ。

ただこういう作品があるからこそ、それが土壌となって大勢の人々を楽しませる名作が生み出されるのだと思う。「前衛」という言葉そのものの意味で、後に続く作品の露払いとなったと言う点で実にアバンギャルドな作品だった。だからもう一度言おう、この作品を素直な気持ちで「面白い」と言える人は映像制作や舞台芸術に携わる玄人だけだろうと。