Amazonプライムビデオで「天河伝説殺人事件」を見た感想

Amazonプライムビデオで「天河伝説殺人事件」を見た。1991年に公開された映画で監督は市川崑、名探偵「浅見光彦」が活躍する内田康夫の推理小説を映画化した作品だ。

私は推理小説が好きでかつて内田康夫の浅見光彦シリーズもたくさん読んだ。この「天河伝説殺人事件」も原作を読んだ事はあるが映画を見たのはこれが初めてかも知れない。1991年の映画という事で女性の太い眉毛やスーツの雰囲気、赤いスポーツカーなどバブルの香りが懐かしい。最近ではあまりみかけなくなった緑の公衆電話なども昭和の雰囲気を感じさせる。

また昔の映画ならではの事と思うが、演技が少し野暮ったい。いまでこそベテラン、名優と呼ばれる役者の演技があまり良くないのがかえって面白い。役者の演技というより脚本と演出のせいかも知れないがあまり洗練されてない感じが逆に良かったりする。主演の榎木孝明の二枚目半というか、いまいち垢ぬけないお坊ちゃん的な感じが特に浅見光彦のイメージぴったりで良い。

あまり洗練されてないといえば画面の美しさは格別だ。特に物語に深く関わる薪能のシーンは、現代と比べて画面のコントラストがあまりはっきりしてない分だけ生々しい雰囲気が伝わってきて印象深い。

ミステリーとしての話の本筋はまあそれほど盛り上がりはないというか、奈良の山里で繰り広げられる愛憎劇だが金田一耕助シリーズと比べるとグロテスクさというか人間の内面の毒々しさに欠けるというか、これといった悪役がいないのが致命的だった。

それでも全体としてAmazonプライムビデオで暇つぶしとして見るには上出来だったと思う。