コクリコ坂から を見た感想

少々遅ればせながら、スタジオジブリのアニメ映画作品「コクリコ坂から」を見た

舞台は戦後、これから復興期を迎えようとしている日本のとある港町。1963年の5月というから東京オリンピックの前年、新安保反対の学生運動の残り火がまだくすぶっていたり、ベトナム戦争やキューバ危機といった米ソの冷戦がにわかに熱を帯び始めていたような時代の話である。

とはいうものの、そんなきな臭い時代の暗部には触れることなく、昭和のノスタルジックな街並みと共に清らかにストーリーは進行する。大人はみんな良い大人で、子供はみんな良い子供。アニメだからだろうか、小さなお子さんにも苦くないように昭和をオブラートに包んで描いたような作品である。

そんな作品なので物語にはまったくと言っていいほどドラマが無い。文化部学生によるカルチェラタンの取り壊し反対運動を除けば、恋の相手が血の繋がった兄妹ではないかとの疑惑があった程度である。調べてみるとカルチェラタンについては映画オリジナルの設定らしく、ここは脚本担当の宮崎駿が学生運動世代だからだろうか、かなり強引に付け足したような感が否めない。血のつながり云々については少女漫画じゃあるまいし、と思っていたらなんと原作は「なかよし」で連載されていた少女漫画らしい。

とここまで調べて納得が言った。映像についてはノスタルジックな街並みの美しさなどには目を奪われるものの、肝心のストーリーについてまったく共感できず、はっきり言えば「どうでもいい」のだ。

学生運動世代ではないので、カルチェラタンの件にも共感できない。安っぽい少女漫画みたいな恋愛の設定にはさらに共感できない。別に駄作とまで言うつもりはないが、せっかくジブリの優秀なスタッフを使って映画を作るのに、こんな手抜きのストーリーで良いのかと言いたいのだ。「もったいない」は日本の美徳ではないのか。ああもったいない、もったいない。別にこんな作品があってもいい。でもやるなら余所でやれ。あと宮崎駿は監督をやらないなら余計な口を出すな。

う~ん、ジブリを見て育った世代なのでこれを言うのはつらいのだが、もうジブリの作品に期待するのは無理な注文なのかも知れない。