松本人志 遺書を読んだ

1994年の発表というから今から約15年、ダウンタウンが人気の絶頂だった頃の作品だと思う。

松本がお笑いの一時代を築いた天才の一人である事は間違いでは無いと思うが、やはりこの頃と比べると今の松本はピークを過ぎた感じがしてならない。もちろん他のどうでもいい芸人に比べればマシだが、松本にはベテラン芸人としての円熟みたいなものをして欲しくないような気がする。ぶっちゃけ今の松本は芸人というより、ベテランタレントと言った方がしっくりくる。別に漫才をやれとはいわないが、もはや若手ともいえない後輩芸人に囲まれて笑いの空気を作ってもらってる感じがする。この本で言う所の「笑わせる芸人」ではなく、「笑いの空気を作ってもらってる芸人」だ。もちろんそういう人間関係も含めての松本人志というならそれでも良いが、たぶんかつての松本が自認していた芸人の形ってそういうものじゃあないと思う。

この本の中で松本が褒めている志村けんについてもそうだが、ピークを過ぎて円熟期に入っているお笑い芸人は、ある意味において非情に貴重な存在だが同時に絶頂期の残りカスみたいな存在でもある。これはスポーツ選手でも同様で、ピークを過ぎて監督や解説者として活躍する人もいるけど、それはすでに現役ではないのと同じだ。松本も志村も現役でお笑いに携わっていはいるが、「笑いの天才」としては既に現役ではない。これは別に二人に対する侮辱ではなく、どんな天才でもピークを過ぎれば後は下に落ちるだけだと思う。映画なんか撮ったりしてるのも何かの迷いというか試行錯誤なんだろうか。結局は他人の人生なので松本の好きにすれば良いのだが、個人的には絶頂期の松本に匹敵する新人が早く現れて欲しいと思う。天才の代わりは残りカスの本人ではなく、別の天才にしか勤まらない。