マッサマンカレーが世界一おいしい料理というのは間違いでした – CNNが認める

近頃発売された日清食品のカップラーメン 日清 カップヌードル マッサマンカレー を食べて少し気になる事があった。結論だけを先に言うと、日本のネット上で今でも流布されている「世界一美味しい料理はマッサマンカレー」という話が間違いでしたという事である。

マッサマンカレーとは、ココナッツミルクベースのタイカレーに落花生もしくはカシューナッツのペーストを加えたタイ南部の甘口のカレーである。カップヌードルのカップのふたや横には「世界一美味しいと話題のタイ南部のカレー」と書いてあるが、こういうのを見ると「そんなの誰が決めたんだよ」と思わずにいられない私は早速ネットで調べてみた。

2011年、CNNインターナショナルのCNNGoは、「世界で最も美味な料理ランキング50」(World’s 50 most delicious foods.)で、マッサマンを1位に選出した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/マッサマン

なるほど、どうやらアメリカCNNの国際向け放送の旅行番組内で決められたようである。しかも「世界一美味しいカレー」ではなく「世界一美味しい料理」ときた。私もマッサマンカレーは美味いと思うが、これはさすがに言い過ぎだと思わざるを得ない。そこでウィキペディアの記事のソース元であるCNNインターナショナルの 「世界で最も美味しい食べ物ランキング50 」のページを読んでみると、選考基準や選考した人が誰なのかどこにも書いてはいない。これは推測だが、記事作成者のクレジットに “CNNGo staff” とあり、記事内の主語に “we” が使われているので番組スタッフの話し合いで決められたのだろうと思われる。

ちなみに9位にアメリカのアイスクリームがランクインしている他、ドーナッツやバター味のポップコーンなどアメリカの食べ物が7つランクインしている。我が日本の食べ物では、32位にアン肝、29位に近江牛、4位に寿司がランクインしているが、選考基準が謎過ぎて素直に喜べない。なお3位はメキシコのチョコレート、2位はイタリアのナポリ風ピザ、そして堂々の1位がタイのマッサマンカレーである。

ここまでは日本のネット上でも良く知られた話なのだが、実はCNNインターナショナルは同じ記事内でこのランキングを見た読者向けにネット投票を実施しており、2011年9月7日にその投票結果を発表する記事を書いている。そちらのランキングではマッサマンカレーは第10位と大きく順位を落としている他、日本の料理は8位にラーメン、3位に寿司がランクインしており、2位がインドネシアのナシゴレン、1位もインドネシアのルンダンという結果となっている。

そしてここからが本題なのだが、CNNインターナショナルはこのネット投票の結果を受けて、記事内で「マッサマンカレーが世界一美味しい料理というのは間違いでした」と公式に認めているのだ。

And now, after more than 35,000 votes, it appears we got it all wrong. The world’s most delicious food is not Massaman curry, as we suggested, but a meaty, spicy, gingery dish from west Sumatra.

3万5千以上の投票をいただいた結果、我々が完全に間違えていた様です。世界一美味しい料理は我々の選んだマッサマンカレーではなく、お肉たっぷりで、スパイシーで、ショウガの効いた西スマトラ地方の料理(ルンダン)です。

読者が選んだ世界で最も美味しい食べ物ランキング50 – CNNインターナショナル

つまりこの投票結果が発表された2011年9月7日の時点で、マッサマンカレーが世界一美味しい料理だという根拠はなくなったのだ。にも関わらず最初のランキングが発表された2011年7月以降、2015年になった現在でも日本のネット上では「世界一美味しい料理はマッサマンカレー」というニュースが新たに作られ流され続けている。

この事実を知ってか知らずか、「世界一美味しいと話題のマッサマンカレー」を宣伝文句に販売されている商品は、「日清 カップヌードル マッサマンカレー (2015年7月発売)」の他に、亀田製菓の「マッサマンカレーせん (2015年6月発売)」と明治屋の「エスニックごはんの具 マッサマンカレー (2014年8月発売)」、西友のプライベートブランド「みなさまのお墨付き カシューナッツ香るマッサマンカレー (2015年2月発売)」などがある。

私もマッサマンカレーはとても美味しいと思うし、日清のカップヌードルもとても美味しいと思った。マッサマンカレーが世界一美味しいと信じている人々の気持ちを害するつもりも毛頭ない。

しかしいくら海外の情報だからと言って、いつまでも間違った情報が流され続ける日本のネットメディアの現状を見て悲しい気持ちにならざるを得ない。ニュースソースであるCNNの記事をちゃんと読めば解ることを誰も指摘していないという事は、自分でソースを読まずに余所の記事をパクって記事を書いているか、企業から宣伝を依頼されて記事を書いているため (いわゆる “ネイティブ広告” あるいは “ステルスマーケティング”) あえてその事に触れずにいるとしか思えないからだ。