自殺島 1~5巻を読んだ

森恒二による無人島サバイバル漫画、自殺島 1巻から5巻までを読んだ。

無人島を舞台にしたサバイバルを描いた作品は数多くあるが、この作品の特筆すべき所は、サバイバルすべき登場人物たちがみな「自殺志願者」だと言うことだ。何度も自殺を繰り返しても死ぬに死ねなかった人間たちが政府の手によって無人島に置き去りにされるという設定はとても奇抜で面白い。

もともとが自殺志願者だから、無人島での過酷な状況に耐えられず自殺する人間は後を絶たない。そして自殺する事ができずにとりあえず生き残ることを選択した者たちの中には、先に死んでいった者たちに対する「コンプレックス」がある。生き残ることを単純に良しとせず、それぞれが自ら生きるという選択に至る過程が丁寧に描かれているのである。

主人公は現代日本の社会では何の夢や希望を持てずに無気力に暮らしていた。周りの人間に「夢を持て」と言われ続けてもついに夢を持つ事はできなかった。そうしてただ生きているだけでは許されない社会に適応できなかった主人公は、ただ生きるという事が非常に困難な世界で自らの幸福を見出す。島で何も考えずにただ生きる動物達に魅了され、その生命を奪って生きる狩人となる事を選択したのだ。

そうして自殺志願者から狩人となった主人公は、今度は個人の問題から集団の問題に直面する。生きる決意が生まれても自分一人では生き残れない。そして周りは未だに生きるという事に積極的な意志を持てずにいる者ばかりだ。自分の体験や考えを言葉で伝えても、それぞれの抱えている問題が違うので他人には通用しない。そうして次々と無人島の住人たちをさまざまな問題が襲う。

多少説教くさい部分があったりするが、生や死を単純に美化しない点はかなり好感が持てる。これはぜひ映画化して欲しいし、きっといずれ映画化されるような気がする。続巻も非常に楽しみなので、続きがでたらまた読みたい。