アリス・イン・ワンダーランドを観た

ティム・バートン監督のアリス・イン・ワンダーランドをブルーレイで観た。

さすがティム・バートンというべきか、ディズニーのスタッフも協力しただろうがこの手のファンタジー世界を描かせたら今のところ右にでるものはいないのではないだろうか。基本的にファンタジー世界を描くのは実写よりアニメの方が表現力が勝っていると思っている私も、ティムバートン監督の映像美には納得させられざるを得ない。

ただこの映画の主演は知名度からジョニー・デップとなっているが、今作では彼の演技は特に活きていないような気がする。ティム・バートンとジョニー・デップのコンビなら売れるだろうという感じで配役が決まった感じがして、マッドハッターがジョニー・デップである必要性が感じられないのが残念な所だ。彼の個性的な演技は、もうちょっと別の形で見たいと思う。

さらに残念なところは、主役ともいうべきアリスが成長して19歳になっている所だ。この作品的にはあえてそうしたのだと思うが、きっと原作者のルイス・キャロルは成長したアリスなど認めないだろう。ちなみにルイス・キャロルことチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンは性的嗜好については議論の余地があるが、ともかく「幼い少女がとても好き」な人物で、ヌードを含む多数の少女の写真を撮影して写真家としても後世に影響力を及ぼした人物である。そして “不思議の国のアリス” はそんなドジソンが仲良くしていたリデル一家の三姉妹の次女、アリス・プレザンス・リデル(10歳)をモデルにして彼女達に即興で語って聞かせた話がもとになっている。

アリスは幻想世界の少女でなければならないのだ。しかし今作ではアリスが19歳である事によって、幻想の世界は打ち壊されて現実の世界が幻想に勝る結末を迎える。精神的にも大人になったアリスは、現実に向き合い現実世界での新しい冒険に出る所でストーリーは終わっている。なんてありがちな結末!なんてどうでもいいハッピーエンド! さすがディズニー、原作の世界観をぶち壊す事にかけては並ぶものはいない!!

まあ残念ながらハリウッドの限界が見えた作品だとも思う。せっかく素晴らしい技術力で幻想の世界をスクリーンに再現するというのに、幻想のなんたるかを理解せず大人の現実世界をわざわざ持ち込む意味が解らない。行動的な女性を主役にした物語を描きたかったら他の作品でやればいいのだ。どうせ終わりはどれも同じような感じになるのだから。