フラクタルを観た感想

テレビアニメ「フラクタル」を観た。この作品は観る前に作品タイトルで検索したらネット上にあまり芳しくない評判があふれていた事もあって、正直なところあまり期待を抱かずに観たのだが、実際に観てみたら相当に面白い作品だった。

作品の雰囲気は解かりやすく言うと「昔のジブリ」。この点がネットでは「パクり」だと批判されていたようだが、パクりはパクりでもプロの集団によるクオリティの非常に高いパクりで、しかも今のジブリが決してやらないであろう事をやってくれているので個人的にはかなり好きな系統の作品に仕上がっている。ジブリ作品を意識しているだけあって、ジブリほどではないにしろ作画や演出のレベルは高い。ただ上手にまとまり過ぎている感があるので、人によっては面白味が無いと感じられるのかも知れない。

ストーリはこれまたありがちな、「科学が発展しすぎて現代的な人間らしさが失われた世界で、その世界の是非を巡る争いに主人公やヒロインが巻き込まれる」というSFファンタジー。ネットではこのストーリーが少々解りにくいと批判されていたようだが、正直こんなどうでもいい設定のストーリーはたとえ理解できなくても作品を楽しむ上ではなんの障害にもならないと思う。まあところどころアニメ・オタク文化を皮肉ったようなセリフがでてくる点が少々鼻につきはしたが、同人作家のバカな悪ノリだと思って黙殺する事にした。

そうなのだ。私としてはこの作品がネットで色々と批判されていた点についてはまったく同感なのだが、その上でなおこの作品は娯楽として十分に楽しめるアニメであったと思うのだ。個人的には名作といってもそれほど大げさではない。

私はアニメはあくまで娯楽として楽しみたいので、いわゆる粗製濫造と批判されがちな萌え作品・ハーレム作品なども決して嫌いではないのだが、このフラクタルのようなかつてのアニメの王道を踏んだような作品がもっとたくさんあっても良いと思っている。かつてのアニメはキャラクターの内面を必要以上に掘り下げたり、ストーリーに必然性のまったく無い謎が隠されていたりはしなかったものだ。もちろん制作側が暗に含ませた比喩表現みたいなものはこの作品でもあるのだが、いやどちらかと言うとそこは確かに私も鼻につくのだが、あえてそんな意図を完全に無視して作品を見ると後には非常にクオリティの高い娯楽作品が残るのだ。