セントールの悩み 1~5巻を読んだ感想 これって日常系って言うのかな?

以前からネット上で時々良い評判を目にしていた、村山慶による「セントールの悩み」を1巻から5巻まで読んでみた。

コミックのカバーを見て解る通り、上半身が人間・下半身が馬の人馬の少女が主人公の漫画である。友人たちもそれぞれ翼が生えていたり、頭に角が生えていたりしているが、怪物という訳ではなく進化の過程でその様に進化しただけの普通の人間という設定である。なのでファンタジーというよりは、どちらかと言えばSFに近いと言えるが、これまた特に近未来的な技術が登場する訳ではない。

現実の世界と大きく違う点は肉体的差異から生じる文化的側面に色濃く表れており、例えば身体的特徴で差別を行う事が重罪とされていたりもする。また現実の世界と同じく文化や思想の違いから紛争も起きているみたいではあるが、主人公周辺の世界は平和そのものであり、ほぼ現実の日本と同じ生活を享受している。解りやすくまとめるならいわゆるモンスター娘が普通に暮らすIFの世界の日常を描いた作品だ。

およそ日常系とはかけ離れたモンスター娘という設定で日常作品を描く、このアンビバレンツがこの作品のキモである。もしも普通の人間で描いたら、少女漫画にたまにあるほのぼの日常漫画とほとんど変わらないのだが、キャラクターが普通の人間ではないために、彼らの動作や思考パターンにいちいち何か意味が隠されているのではないかと勘繰りながら読んでしまう点は、むしろ男性読者向けである。

ただし最初の印象が強すぎるために後半になってくると少々飽きがでてくる。だからと言ってこの世界観を壊してまで物語を急展開させるのが良いかどうかは私には解らない。あるいは南極蛇人のようなキャラクターをどんどん追加して延命を続けるのか…いずれにせよ先が読めなさすぎると同時に今後の展開が気になる作品ではある。