Amazonプライムビデオで「たそがれ清兵衛」を見た感想

Amazonプライムビデオで「たそがれ清兵衛」を見た。

たそがれ清兵衛は藤沢周平の同名の短編時代小説他2編を原作として監督: 山田洋次、主演: 真田広之で制作された本格時代劇である。藤沢周平の小説は私の父が昔から大好きで私も子供の頃から何冊か読んだ事があるが「たそがれ清兵衛」は読んだ事があるかどうか覚えていない。それはさておきこの映画を見た私のシンプルな感想は「現代人が見てリアリティを感じる命のストーリー」というものだった。

「本格時代劇」なる時代劇の分類はたびたび耳にしてきて、これまでにもそういった作品を何度か見たことがあるが、要するに昭和のチャンバラ中心の時代劇と違って時代考証をある程度ちゃんとした上で現代人にも共感を呼びやすい人間ドラマを描くジャンルなのだと思う。その意味ではこの「たそがれ清兵衛」はまさに現代の大人が見て最も共感を呼びやすいヒーローとして創られている。

出世や裕福になる事は望まない。早くに妻を亡くし、年老いた母と幼い子供二人とつつましく暮らし、着の身着のまま薄汚れた身なりをしているが実は剣の達人で、幼馴染の美人に密かな恋心を抱かれている。身もふたもない言い方をすれば自信を喪失した現代日本のハードボイルド、大人向けのライトノベル、このある意味とてもチープな設定が山田洋次監督の映像美と真田広之の見事な演技によって昇華されている。

登場人物の演技はほぼ全編に渡って素晴らしいが特に主演の真田広之と田中泯の殺陣のシーンが最高だ。二人とも剣の達人のはずだが、いわゆるチャンバラのような派手はやりとりはない。一瞬のスキを見せれば切られるという緊張感からか達人といえでも恐る恐る剣撃を繰り出し、そして実際にほんのわずかなミスによって勝敗が付く。そして若干芝居がかった点もあるが田中泯の絶命シーン。本格と言いつつも殺陣がクライマックスになるのは時代劇の宿命か。

結論として非常に面白かった。まだ見た事ない人にはぜひおすすめする。